※ラッセン展を便宜上「美術展」扱いして書いてますが「ラッセン展などアート展示ではないわい!」と怒ったり私のことを見下したりしないでくれると嬉しいです
田舎の大学に通っていた、数十年前のはなし。
その頃はラッセン全盛期前後だったと思う。
電車が無くてディーゼルの汽車が走っているような田舎にもラッセン展がやって来た。
工藤静香展と同時開催だった。どちらも精巧な版画的なヤツを展示即売するヤツ。
主催があの有名な会社かどうかはまだ物心ついてない大学生だったのでチェックしてなかったけど、たぶんソレ。
場所は県民文化会館的なホールのロビー。
折込チラシのクーポンを持って行ったらラッセンか工藤静香か好きなほうのポストカードが貰える。
TVCM(静止画)もやってた。
わたしは当時、今よりもっとアホで
アートのaの字も知らなかったので
わたしはジグソーパズルが難しくて嫌いだけど、パズルが得意な地元の友達(=自分ができないことをやってのけるスゴイ奴)が「ラッセン好きやねん」って言いながらラッセンのパズル作ってた
→「好きな画家」がいる友達はスゴイ。オトナ。
→凄い友達が好きなラッセンもスゴイ。
っていうアホなノリで「ラッセンなるアート」に好意を寄せていた。
ラッセンをわかる人は文化人なんだ!わたしも文化人になりたーい!と思っていた大学生の私は、午後の授業がない平日にディーゼル汽車に乗り意気揚々と県民文化会館にでかけて行った。
入口で同じ学部の友達2人に偶然出会い、一緒に入場した。こんな文化的な場所で友人に出会えたことに歓喜した。大学に入って良かったと思った。
ラッセン展では入口で職業とかを書かされるのだが、無邪気な田舎の大学生3人は「大学生で〜午後の授業が休講で〜」って受付の人から聞かれるがままにゴキゲンなノリで答えた。
なんかコレ、商談に持ち込むかどうかの検査的なヤツらしいね?数年後にネットで得た情報によると。
クラス分けのシールを貼るとかなんとか。浮かれすぎてそこらへんは覚えてないんだよな。
ピュアすぎてな。
なんせ美術展なんて、生物部に入ってもないのに高校の生物部のルーブル美術館展見学にくっついて行ったという体験しかなかったので。
(なぜ生物部でルーブル美術館展なのかは謎。その時のわたしの感想は「モナリザが無い!詐欺だ!」。ルーブル美術館展っつったらモナリザが見れるもんと思い込んでいた。)
なので色々と聞かれたことについても「美術展ってアンケート書いてから入るものなのね〜」「美術展って買うこともできるんだ〜」って思い込んでいた。すごいだろ。
いや、買うことができる展示会はおかしくはないんだけども…。
絵を見ている間めちゃくちゃ商談の声が聞こえてくるから、なんかスタッフさんに相手されてる人たちが羨ましくなってきて
買えもしないのに10万円くらいの値札がついた絵の前で「これくらいなら買えるかもなぁ〜」って3人で話したりしたのに
一切勧誘されなかった。
残念。
まあ買わんけど。
アホって無敵なのかな。なんなんだろう。
あの時の自分(と友人2人)の、あの会場での感じって客観的にみたらどうだったんだろう。
販売会社だって全部の来場者に営業をかけるわけじゃないんだから、ああやって入り口で選別するんだろうに。あの時の我々の振舞い・浮かれ方から滲み出る自身のヒエラルキーのわかってなさが痛いというか。カモられる価値すらなかった自分に今の自分を重ね合わせてしまうというか…。
でも残念なことにわたしの大学生1〜2年頃の思い出の中では輝かしい部類なんだよなコレ。
そしてわたしの人生を象徴しているようにも思える。
ラッセン展のことを思い出すたびに考えてしまう。
さっき『そんない美術の時間』っていうPodcastを発見して「ラッセンはなぜアート業界でタブーなのか」という回を聴きまして。それでまた上記のようなことを思い出してしまったわけです。
タブーなことも知らなかったけどね。普通に工藤静香の絵(二科展入選)くらいのカーストにはいると思ってたからね。共同開催されてたくらいだから。
まあ工藤氏のアート界での立ち位置も全く知らんけどね。つーか今も描いてるのかすら知らん。
そういやPodcastで「ラッセンはヤンキー文化が云々…」みたいなくだりがあったけど、工藤静香と共同開催ってのがなんかソレソレって感じですな。
ちなみにクーポンで貰ったラッセンのポストカードは知らん間にどこかに消えました。