流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 @京都国立博物館
基本的に、美術館や博物館ではペンは使用禁止です。そして模写も禁止。
これをもってして「メモ取るの禁止だし楽しめなかった」とSNSで愚痴ってる人がいたけど、残念でした、鉛筆なら使えるしノートもOKです。
実際メモを取りながら見てる人はポロポロいる。そんなに多くはない。単眼鏡を持っている人よりは少ない。
わたしはもともと、音声ガイドも聞かない、図録も買わない、気に入った作品のポストカードが1〜2枚あればいい派だったのだけど、
書店にある絵画解説本より図録のほうが濃くてコスパがいいことに気付いて図録を買ったりしてるうちに、気に入った作品の感想のひとつくらい記録しておきたくなったり
気に入った作品に限ってポストカード化されてなかったり、
せめて展示品目録の気に入った作品の番号にマルひとつ付けておけば後から検索でも何でもできたのに…!と悔やまれることなどがあったりしたので、
この三十六歌仙絵展ではじめてノートと鉛筆を持ち込むことにした。
PATHFINDER ツアーのサコッシュはほんとうに便利。黒一色だからどこにでも持っていけるし。
ここに小さいノートと鉛筆を2本、貴重品とともに入れ、他の荷物はコインロッカーに預けた。美術館のコインロッカーはライブハウスと違って100円が返却されるので使わない手は無い。
下調べしたところによると、一目で「鉛筆である」とわかるものの方が監視の人を惑わさなくて済むらしい。遥か昔のセンター試験で使われて以来、カンペンの中でずっとこの時を待っていた鉛筆を引っ張り出してきた。キャップは新しく買った。
音声ガイドを聞きながら鑑賞したのだが、
普通のガイドに混じって、時々アニメ『ちはやふる』のキャラクターが喋るのが違和感で…アニメ観てないし展覧会の雰囲気にも合わないし、コレ要らんなあ…と思いつつ聴いていた。
すると宮野真守さん演じる男の子が「坂上是則って…フッ…僕に似てるんですよね…」みたいなことを言いだして、なんやコイツ世迷いごとを と戸惑っていたら、この歌人が蹴鞠の名人で、後醍醐天皇の御前で蹴鞠を落とさずに206回蹴ったとのこと。(サッカーが得意な自分に似てるんだって。)
それが印象に残ったのでメモに書き留めたのだが、なんかちょっと悔しい。
あと、歌仙絵に書かれた歌の中で一番気に入った歌をメモったり、江戸時代に書かれた歌仙絵はオッサンの正面顔が描かれてて新しさを感じたこととか、柿本人麻呂を崇める「人麻呂影供(ひとまろえいぐ)」に、アイドルとかアニメやゲームのキャラを崇めるあまり祭壇を作ってしまう人々を重ねて見たりしたこととか、そんな色々をノートに書き留めて帰って来た。
これまでは「わざわざメモらなくても図録に載ってるから後で図録を見返せばいい」と思っていたのだけど、なんせ図録は分厚くて内容量が多い。この歌仙絵展だと図録は総ページ数300を超えている。
これを読破するのは展覧会を見て回るよりも多くの時間を要することになる。
実物を見たときの自分の感情に素早くアクセスできるこのノートは、どんな図録や解説本にもない自分だけの大切なガイドブックになるのではないだろうか。とそれなりの成果を感じたので、これからも続けようと思う。
ただ、わたし以外に展覧会でメモを取っている人々がどんなことを書き留めているのか、きっと上記のようなくだらない内容じゃない気がしてちょっとソワソワしている。
でもわたしの感想は私だけのものなので、今日のところはこれで良いことにしておく。
ちなみに、一番気に入った歌
かくばかり経がたく見ゆる世の中に
うらやましくもすめる月かな
ー藤原高光