LOSTMAN NEED BLUES DRIVE MONSTERS

神経質で性格が悪い人のブログ。ブーメランな意見を述べがち。消しがち。更新が多いときは調子が悪いときです。更新がないときはもっと調子が悪いときです。情報商材いりません。

あのころコンサルが言ってた「モノよりコトを売る」が10年弱かけて予想を超越した

いくつかのブラック企業を渡り歩いてきた私は、経営者が縋る思いで招聘し、冷めきった社員たちには「またクソ社長の思い付きで仕事が増えた」としか受け取られず、理論だけが空回りするコンサルタントさんのワークショップ的なものに参加したことが何度かある。

そこでコンサルさんがパワポを駆使して説明してくれたのが「今はモノ(=商品)ではなくコト(=体験)を売る時代」「リピーターになるファンを増やせ」てことだった。

そんなことを安月給で擦り切れるまで働かされてるスタッフに聞かせてもモチベーションが上がるわけもなく、しかも「この会社が他社よりアピールできるところ…?…(熟考)…無い!!」という結論に達してしまって辞めたさを助長され、

経営陣は経営陣で、コンサルを呼んだ理由は「魔法の力で手っ取り早く業績を回復しておくれ」くらいの他力本願でしかなく、スタッフに働く喜びを提供できてないんだから当然お客さんに対してどうすれば楽しさを提供できるのか思いつくはずもなく。

ある会社では会議に会議を重ねた結論として「全スタッフが実名&顔写真入りのPOPを書く(ノルマ一人10枚)」とかいう地獄の施策を押し付けて大反発された挙句(←みんなその会社の社員だと世間に公表したくない)、社長の親族(役員)がネズミ講にハマって、子ネズミになった従順な社員のみを重用するようになり…という斜め上にすっ飛んでいって空中分解した。ちなみにネズミ講を勧めたのはコンサルさんらしい。最初のコンサル(ギャラ高い)を切って、新しく入れた謎のコンサルという噂。

私はペンネームでPOPを3枚ほど書き捨てた段階で退職したので対岸の火事でした。

 

そして今、そのコンサルが言ってたことは度を超えSNS映えという姿に変身して世の中に定着している。

若い女の子がレコード屋でレコードを選んでるアタシな写真だけ撮って帰るそうじゃないですか。こないだ「インスタ映え」で検索したら、高校の文化祭の模擬店PRで「インスタ映えします♡ぜひ2-Bに来てください」みたいなんがいっぱい出て来て驚愕した。

レコード屋の件もだけど、サービスを提供する側が「こういう体験を提供したい」って思ってる本筋から逸れた体験をお客さんが自己プロデュースして、勝手に体験してサッといなくなるのって、元々サービスを提供してた側としてはなんか言い知れぬ怖さがある。

「モノよりコトを売る」ことには成功しても、それってプラスな未来が見えますか?

 

音楽のライブでも、「ライブとツイッター大好き」層では音楽を浴びる体験じゃなく「お客さんみんなで(勝手に)協力してサプライズを成功させる」こととか、ちょっと変化球なアンコールの掛け声をみんなで合わせるとか、めっちゃ早めに会場入りして横断幕に寄せ書きを集めるとか、人文字集合写真を撮るとか、著作権グレーなオリジナルグッズを作成して配るとか、「ライブのために一生懸命になって動くワタシ」という体験を楽しんでいるように見える。それってバンドのファンじゃなくて自分のファンじゃねえ?

(あ、ここでいうファンっていうのは、よくメンバーに不倫とか結婚疑惑が出たときに「こんなことでファン辞めるのは本当のファンじゃない」とか、「顔ファンは本当のファンじゃない」とかのニュアンスで使われる「本当のファン」でいなさいよ、というわけではないです。自分の中での微妙な使い分けなので説明しづらいですが、もっとベクトルの違うやつです。)

若いパリピノリについていけない疎外感もありつつだけども、そのことは一旦置いといて、

そういう自己プロデュースな楽しみ方が本来のサービス提供者の制御が不可能になるほど暴走してしまうと、本来のサービスを享受されたいその他の人々を妨害しやしませんか?と不安になる。

 

某バンドの今年のツアーでは、メンバーが呼びかけてもないのにアンコールでスマホライトを点灯させるお決まりみたいなんができてしまってファンで抗争が起きてるとか。

本来の「体験を買う」ってのは、スタッフさんやメンバーが一生懸命トータルプロデュースした舞台演出や演奏をめいっぱい浴びることだと思う。

私たちは素人プロデュースの自己満足なやっすいサプライズを観るために高いお金を払ってチケットを買ったんじゃなく、プロが高い予算をかけて組み上げたパフォーマンスを観に行くのです。うちらは観客であって主人公ではないのです。

自己満足組に荒らし尽くされてライブ産業に草も生えなくなる未来だけは勘弁してくださいホント。

 

タカラヅカファンの知り合いの話を聞いていたら、さすが長い歴史があるだけあって体験とお金のギブアンドテイクがうまく制御されてるなーと感心する。でもタカラヅカはあの土地にあの規模であの歴史とクオリティとかがあってのことなので、そうそうマネはできないだろう。(AK○はその模倣らしいけど、やっぱり性別が女対男っていうだけでも色々とバランスが崩れてしてしまっている。)

 

モノよりコトを売ることは定着した。でもその「コト」を末永くリピートする「ファンを増やす」というもう一つのミッションに「SNS映え」業界は成功しているのでしょうか?

みんな面倒臭がらずにコンサルさんの言うコトを聞いておけばよかったのかもしれないよね。でもネズミ講には気をつけてね。